フランス大統領、欧州諸国への核抑止力提供の新方針を発表
要約
米国の欧州防衛への関与が揺らぐなか、EU唯一の核保有国であるフランスが核の傘を欧州に広げる構想を打ち出した。欧州の安全保障体制の歴史的な転換点となる可能性がある。
フランスが核抑止力の欧州共有へ踏み出す
フランスのマクロン大統領は3日、自国の核抑止力を他の欧州諸国に提供する新たな方針を発表した。EU加盟国で唯一の核保有国であるフランスが、核の傘を欧州全体に広げる姿勢を明確にした形だ。
この方針は、米国の欧州防衛への関与が不透明さを増すなかで打ち出された。トランプ政権が同盟関係に消極的な姿勢を強めていることを背景に、欧州が米国に依存しない独自の防衛体制を模索する動きが加速している。フランスはその中心的な役割を担おうとしている。
欧州防衛の転換点
フランスは冷戦期から独自の核戦力を維持してきたが、核兵器の運用に関する意思決定権は一貫して自国に留保してきた。今回の方針発表は、その伝統的な立場からの大きな転換を意味する。
背景にはロシアによるウクライナ侵攻の長期化がある。2022年2月の侵攻開始以降、欧州各国は防衛力の強化を急いでおり、フランスはNATOの枠組みを補完する欧州独自の核抑止力の構築を推進してきた。
英仏の核連携も進展
フランスはイギリスとの間でも核兵器の運用に関する連携を深めている。両国は「ノースウッド宣言」を発表し、米国を介さない形での核運用における協力を合意した。欧州独自の核抑止体制の構築に向けた動きが、二国間レベルでも進んでいることを示している。
欧州ではこのほか、今後4年間で約125兆円規模の防衛資金を確保する「再軍備計画」や、1500億ユーロ規模の共同防衛ファンド創設といった構想も進行している。過去30年間にわたる冷戦後の「平和の配当」に終止符を打ち、防衛態勢を根本から見直す流れが欧州全体で広がっている。
実現への課題も
ただし、新方針の実現には課題も少なくない。フランスは核兵器の最終的な意思決定権を他国と共有する意向はないとされ、提供の範囲は運用面での協力にとどまる見通しだ。NATOの既存の核体制との整合性をどう確保するかという法的・政治的な調整も必要となる。
欧州の安全保障環境が大きく変容するなか、フランスの新方針が欧州全体の防衛体制にどのような影響を与えるか、今後の具体的な展開が注目される。