26年前の名古屋女性殺害事件、遺族が賠償提訴へ 民法の時効が争点に
要約
1999年に名古屋市で殺害された女性の遺族が、昨年逮捕・起訴された被告に損害賠償を求め名古屋地裁に提訴した。殺人罪の公訴時効は2010年に廃止されたが、民法上の20年の時効が壁となる可能性がある。
事件から26年、遺族が損害賠償を求め提訴
1999年11月に名古屋市西区のアパートで発生した女性殺害事件をめぐり、被害者の夫・高羽悟さん(69)と長男・航平さん(28)が、殺人罪で起訴された安福久美子被告(69)に対し損害賠償を求めて名古屋地裁に提訴したことが3月30日、明らかになった。
事件は1999年11月13日に発生。高羽奈美子さん(当時32歳)が自宅アパートで首などを刃物で刺され、失血死した。事件は長年未解決のままだったが、現場に残された血痕のDNA型が安福被告のものと一致したことから、昨年10月に愛知県警が安福被告を殺人容疑で逮捕。鑑定留置を経て、今年3月5日に名古屋地検が殺人罪で起訴した。
安福被告は高羽悟さんの高校時代の同級生である。逮捕当初は容疑を認めていたが、その後黙秘に転じている。
民法上の「20年時効」が最大の争点
今回の提訴で最大の焦点となるのが、民法上の時効の扱いだ。旧民法では不法行為から20年が経過すると賠償請求権が消滅する「除斥期間」が定められていた。2020年施行の改正民法ではこの除斥の考え方は廃止されたものの、「20年」の時効そのものは残っている。1999年の事件発生から26年が経過した本件では、この時効が成立するか否かが裁判の行方を大きく左右する。
高羽悟さんは「これまで賠償請求をしていなかったのではなく、請求する相手がわからずできなかった。20年で『門前払い』となるのは社会正義に反するのではないか」と訴えている。
公訴時効廃止との「整合性」問われる
殺人事件の公訴時効は2010年に廃止されており、刑事上は事件発生からどれだけ年月が経過しても起訴が可能となった。一方、民事上の損害賠償請求には依然として20年の時効が存在する。
殺人事件の被害者遺族でつくる「宙(そら)の会」は、刑事と民事で時効の扱いが異なる現状について「整合性が取れていない」と指摘し、法改正を求めている。
名古屋市西区で殺害事件発生
高羽奈美子さん(当時32歳)がアパートで刃物で刺され失血死。事件は未解決のまま長期化した
殺人罪の公訴時効が廃止
刑事訴訟法の改正により、殺人など重大犯罪の公訴時効が撤廃された
改正民法が施行
除斥期間の考え方は廃止されたが、不法行為から20年の消滅時効は維持された
安福久美子被告を逮捕
現場の血痕のDNA型が一致し、愛知県警が約26年を経て殺人容疑で逮捕した
名古屋地検が殺人罪で起訴
鑑定留置を経て正式に起訴。被告は当初容疑を認めたが、その後黙秘に転じた
遺族が損害賠償を求め提訴
被害者の夫と長男が民法上の時効の壁に挑み、名古屋地裁に提訴した
本件は、未解決事件の被害者遺族が加害者特定後に賠償を求める際、民法の時効がどのように適用されるかという法的に重要な判断を司法に問うものとなる。刑事裁判の行方とあわせ、今後の審理が注目される。