1. 実質賃金とは 実質賃金とは、労働者が実際に受け取った名目賃金から物価変動の影響を差し引いたもので、その賃金で実際に購入できるモノやサービスの量、すなわち購買力を示す指標です。厚生労働省が毎月勤労統計調査として毎月公表しており、個人消費の動向を把握するうえで重要な統計データとなっています。名目賃金が上昇しても、それ以上に物価が上がれば実質賃金はマイナスとなり、家計の実感としては生活が苦しくなることを意味します。 2. 日本の実質賃金の長期的な推移 日本の実質賃金は1990年代後半以降、パートタイム労働者の増加や消費税の引き上げなどの影響で低下傾向が続いてきました。1997年をピークに長期的な下落トレンドが見られ、近年では2022年4月から2024年5月にかけて26カ月連続でマイナスを記録するなど、物価上昇が賃金の伸びを上回る状況が続いていました。その後、春闘での賃上げやボーナス増加などを背景に一時的にプラスへ転じる場面もありましたが、安定的なプラス基調の定着には至っていませんでした。 3. 政府の目標と今後の課題 政府は2029年度までの5年間で、日本経済全体として年1%程度の実質賃金上昇を定着させる目標を掲げています。持続的な賃上げを実現するには、労働生産性の向上やコスト増加分の販売価格への適切な転嫁が必要とされています。また、企業が雇用の維持や労働力の定着・確保を賃上げの条件として重視する傾向も強まっており、人手不足を背景とした構造的な賃金上昇圧力が今後どこまで広がるかが注目されています。