1. ハンタウイルスとは ハンタウイルスは、主にネズミなどの齧歯類が保有するウイルスです。感染した齧歯類の尿・糞・唾液などの排泄物に触れたり、乾燥して舞い上がった粉塵を吸い込んだりすることで感染します。齧歯類に咬まれることによる感染もまれに起こります。ハンタウイルスには大きく2つの型があり、ユーラシア大陸で流行する腎症候性出血熱(HFRS)を引き起こすタイプと、南北アメリカ大陸で流行するハンタウイルス肺症候群(HPS)を引き起こすタイプがあります。HPSは急性の呼吸器症状を引き起こし、重症化すると致死率が40~50%に達することもあります。原則としてヒトからヒトへの感染は起きませんが、南米のアンデス株ではまれに人から人への感染が報告されています。 2. 日本国内における過去の事例 日本国内では1984年以降、ハンタウイルス感染症の患者発生は確認されていません。しかし1960年代から70年代にかけて、大阪で梅田熱と呼ばれた原因不明の熱性疾患が流行し、119人が感染して2人が亡くなった事例がありました。国際的には、1950年代の朝鮮戦争中に国連軍兵士の間で原因不明の熱が多数発生したことがきっかけで注目されるようになり、1970年代に韓国でウイルスが分離・命名されました。1993年には米国でHPSが初めて大きな問題となり、その後も南米を中心にHPSの報告が続いています。 3. 検疫所の役割と水際対策 検疫所は厚生労働省が所管する機関で、全国の主要な空港・港に設置されています。海外からの感染症の国内侵入を防ぐことが主な役割で、入国者の健康状態の確認や、感染症が疑われる場合の検査・隔離措置などを行います。今回の指示は、クルーズ船でのハンタウイルス集団感染疑いを受け、南米からの入国者に対する確認体制を強化するものです。