新生児取り違え問題、東京都が戸別訪問調査を拒否 江蔵氏は法的措置へ
要約
1958年に都立墨田産院で発生した新生児取り違え問題で、東京都は戸別訪問による再調査を行わない方針を表明しました。被害者の江蔵智氏は判決の完全履行を求め、法的手続きに踏み切る構えを見せています。
都が再調査を拒否、「戸別訪問の義務はない」
1958年に東京都立墨田産院で発生した新生児取り違え問題をめぐり、東京都は被害者である江蔵智氏(68歳)の側に対し、戸別訪問などによる新たな調査を行わない方針を伝えた。これを受け、江蔵氏側は判決内容の完全履行を求める法的措置をとる方針である。
都は2025年4月に確定した東京地裁の判決に基づき、計52人に対して文書を郵送し、DNA鑑定への協力を求めていた。しかし2026年3月、取り違え相手を特定できなかったとする調査結果を公表した。江蔵氏側はこの結果を受け、文書郵送にとどまらず、一軒ずつ訪問して説明する形での調査を求めていたが、都はこれに応じなかった。
東京都の担当者は「調査対象者に対する心情には十分な配慮をしないといけない。判決文を読んでもそこまでの義務が都にあるとは考えていない」と述べ、戸別訪問による調査は判決が求める範囲を超えるとの認識を示した。
江蔵氏「都に生みの親を捜す熱意を全く感じない」
江蔵氏は「都からは生みの親を捜す熱意を全く感じない。一軒ずつ丁寧に説明し、戸別訪問をすれば生みの親を捜せるのではないか」と語り、都の対応に強い不満を表明した。江蔵氏側は今後、判決内容の完全履行を申し立てる法的措置に踏み切る方針である。
本件は半世紀以上にわたる問題である。江蔵氏は1958年4月に都立墨田産院で誕生したが、2004年5月にDNA鑑定で育ての親との血縁関係がないことが判明した。同年10月に損害賠償を求めて都を提訴し、2006年10月には東京高裁が都に2,000万円の賠償を命じている。
都立墨田産院で誕生
江蔵智氏が出生。この時に別の新生児と取り違えられたとされる。産院は1988年3月に閉院した。
DNA鑑定で血縁なしと判明
育ての親との親子関係がないことが科学的に証明され、取り違えの事実が裏付けられた。
東京高裁が賠償命令
都に2,000万円の損害賠償を命じる判決。しかし生みの親の調査には至らなかった。
東京地裁が都に調査を命令
生みの親の調査を求めた訴訟で、地裁が都に調査の実施を命令。判決は確定した。
都が「特定できず」と公表
52人に文書を郵送しDNA鑑定協力を求めたが、取り違え相手を特定できなかったと発表した。
判決が求める「調査」の範囲が争点に
今後の焦点は、2025年に確定した東京地裁判決が都に命じた「調査」の具体的な手法や範囲がどこまで及ぶかという点である。都は文書郵送による調査で判決の義務を果たしたとの立場をとる一方、江蔵氏側は戸別訪問を含むより踏み込んだ対応が必要だと主張しており、判決の解釈をめぐって法廷で再び争われる見通しである。
江蔵氏は2021年11月に生みの親の調査を求めて都を提訴して以来、実の親との再会を求め続けている。出生から68年が経過し、当事者の高齢化が進む中、時間との闘いでもある。