2026/4/1
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経済

政府、国家備蓄石油5300万バレルの放出開始 ホルムズ海峡情勢への対応

要約

経済産業省は26日、ホルムズ海峡の事実上封鎖に対応して、全国11カ所の備蓄基地から5300万バレルの国家備蓄石油の放出を開始する。売却額は5400億円で、民間備蓄・産油国共同備蓄も含めた三層構造の備蓄体制全体が動員される異例の対応となる。

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国家備蓄5300万バレル、26日から順次放出

経済産業省は26日、ホルムズ海峡が事実上封鎖されている事態を受け、全国11カ所の石油備蓄基地から国家備蓄石油の放出を開始する。放出量は5,300万バレルで、国内消費量の約1カ月分に相当する。政府はENEOS、出光興産、コスモ石油、太陽石油の元売り4社と5,400億円の随意契約を3月19日に締結しており、放出された原油はガソリンなどに精製されたうえで国内に流通する。

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※画像はイメージです

26日午前11時には、愛媛県今治市の菊間国家石油備蓄基地で最初の放出が始まる予定だ。27日以降は北海道、千葉県、沖縄県などの基地からも順次放出が進められる。国家備蓄の11カ所のうち、国の基地は5カ所で、残りは民間タンクを借り上げて運用している。25日時点での国家備蓄量は146日分で、今回の放出はその約2割にあたる。

民間・産油国備蓄もすでに動く

国家備蓄に先立ち、民間備蓄15日分の放出は3月16日にすでに開始されている。さらに、産油国共同備蓄5日分についても3月中に放出が始まる見通しだ。日本の石油備蓄制度は、国家備蓄・民間備蓄・産油国共同備蓄の三層構造で運用されており、今回はそのすべてが動員される異例の対応となる。

  1. 民間備蓄15日分の放出開始

    国家備蓄に先行し、石油元売り各社が保有する民間在庫の放出が始まった

  2. 政府が元売り4社と随意契約を締結

    ENEOS、出光興産、コスモ石油、太陽石油との間で総額5,400億円の売却契約を結んだ

  3. 国家備蓄量146日分を確認

    放出前の備蓄量を確認。今回の5,300万バレルは貯蔵量の約2割に相当する

  4. 国家備蓄石油の放出開始

    愛媛県今治市の菊間基地を皮切りに、全国11カ所から順次放出される

  5. 北海道・千葉・沖縄などで順次放出

    菊間基地に続き、各地の備蓄基地から元売り企業への原油引き渡しが進む

  6. 産油国共同備蓄5日分の放出見通し

    国内タンクに貯蔵された産油国との共同備蓄も放出され、三層すべてが動員される

中東依存9割、タンカー到着量は大幅減

今回の大規模放出の背景には、日本の原油調達構造の脆弱性がある。日本は原油輸入の約90%を中東地域に依存しており、その大半がホルムズ海峡を経由して運ばれる。海峡が事実上封鎖されている現在、タンカーの到着量は大幅に減少しており、国内の石油供給への影響が懸念される。

国家備蓄石油の放出としては、2022年のロシアによるウクライナ侵略時に5日分を売却した前例がある。しかし、今回の5,300万バレルという規模はそれを大きく上回り、1973年の第1次オイルショックを契機に石油備蓄法が制定されて以来、最大級の対応となる。

放出後の備蓄水準に課題も

今回の放出により、国家備蓄量は146日分から約2割減少する。民間備蓄15日分と産油国共同備蓄5日分もあわせて放出されるため、日本全体の備蓄水準は大幅に低下することになる。ホルムズ海峡の封鎖が長期化した場合、備蓄の回復が困難になるリスクも抱えている。国の石油備蓄基地は全国に5カ所あり、今後の供給安定に向けた運用が問われる局面だ。